2024年以前は、アース(EARTH)の髪型診断アプリ「AI STYLIST」(2023年2月に100万ダウンロード)や、花王の社内向け生成AI「Kao AI Tools」(2023年6月提供開始)など、単体ツールの導入が目立ちました。2025年以降は、生成AI(文章や画像を新しく作るAI)やAIエージェント(目的を伝えると作業を進めるAI)が、研究開発や在庫計画など業務の中心に入り始めています。

企業取り組み公表された成果発表
資生堂処方開発AI「VOYAGER」の新機能で、ミストタイプのサンケア製品を開発50万以上の知見・技術の処方データを統合。数万通りを生成し数十の候補に絞る2026年1月
資生堂ジャパンエキス原料を探すAIエージェント探索時間を95%削減、原料提案数は20〜50%増2026年7月講演(9月報道)
ポーラ化成工業目標の感触から処方を予測するAI「AIM POLAR」数字なし(試作回数を大幅に減らせるとする)2025年9月
ロート製薬フツパーと研究開発向けAIエージェントを共同開発約20日の工程が最短2日に短縮可能(担当者談)2026年4月(フツパー発表)
ロレアルNVIDIAのAI技術で、成分の働きを原子レベルでシミュレーション従来の方法より100倍速い探索になるとする2026年3月

資生堂やポーラ化成工業は、研究員の知見やノウハウをAIに学ばせています。VOYAGERの処方開発AI(2024年2月に本格稼働)も、決めるのは研究員です。ロレアルは2025年1月、IBMと処方開発向けAIモデルの共同開発も発表しました。資生堂ジャパンと花王の事例はAIエージェントとは?でも紹介しています。

企業取り組み公表された成果発表
花王NTTデータの生成AI基盤で8人の「AI生活者」を作り、メイクブランドの調査でインタビュー6人程度・1〜2時間のグループインタビューと同様の内容を数分で調べられた(担当者談)2026年4月(NTTデータ)
ロレアル生成AI制作基盤「CreAItech」でGoogleの画像・動画生成AIを活用最初のコンセプト作りが「数週間から数日」に2025年4月(Google Cloud)
P&G(パンテーン欧州)企画から広告の試作までをAIと人で進めた素材は5倍、スピードは5倍、コストは5分の12026年7月
エスティ ローダー カンパニーズChatGPTなどの回答で自社ブランドがどう紹介されるかを把握・改善するため、Profoundと提携数字なし2026年9月

広告づくりは「速く・多く・安く」の効果が数字に出やすい分野です。

企業取り組み公表された成果発表
資生堂「エリクシール AIスキンアナライザー」にAIチャット(2025年9月)とたるみ改善シミュレーションを追加2024年9月の開始以来、延べ172.9万人が利用2026年8月
ファンケルAI角層解析「FANCL SKIN PATCH」を全国の直営店で開始1カ月で体験者1万7,000人を突破。2026年3月の直営店の新規客数は前年同期比130%2026年4月
ケラスターゼ(日本ロレアル)AI頭皮分析機器「K-SCAN」を一部のサロンで順次展開世界9,000サロンで使用(2026年6月)。サロン売上を平均23%伸ばしたとする(ロレアル年次報告書)2025年7月(日本)
アートネイチャー生成AIの「AIヘアスタイルシミュレーター」を無料カウンセリングに導入全国148のメンズサロンで実施2025年1月
中野製薬毛髪表面の画像から、AIでダメージ度合を推定するプログラムを開発(特許出願中)数字なし2025年3月

診断やシミュレーションは、提案の「入り口」になります。

企業取り組み公表された成果発表
資生堂ジャパン店頭の美容部員用タブレットに生成AIチャットボットを導入数字なし(問い合わせ時間の短縮を狙う)2025年9月
ファンケル通販サイトとLINEの問い合わせチャットにAIチャットエージェントを導入利用者の自己解決率が約30%向上。メンテナンス時間は最大1週間から1時間に2026年9月(モビルス発表)
ファンケルコンタクトセンターに3つのAIを組み合わせた基盤「FANCL COE LINK」応対後の記録業務時間を約46%削減できる見込み2026年9月
アテニア美容部員の接客ノウハウを読み込ませた「AIビューティアドバイザー」(音声・チャット)数字なし2026年2月
オルビス公式オンラインショップのAIチャットボット(2022年導入)ボット満足度が実証段階の61%から78%に。2025年7月時点で約83%2025年9月(カラクリ発表)
ミルボンナレッジコミュニケーションと、美容室向け生成AIサービスの研究・開発を開始研究段階(美容室で実証実験を予定)2025年5月
ロレアル米国で対話型のビューティーアドバイザー「Beauty Genius」を提供110万回以上の会話(2025年)2025年版年次報告書

人の接客を置き換えるより「美容部員の知見をAIに移す」設計が目立ちます。ロレアルは2026年6月、OpenAIとの協業で、メイベリンのバーチャル試着をChatGPT上で提供すると発表しました。

企業取り組み公表された成果発表
花王需要計画の案と根拠を示すAIエージェント「Kao-MIKOMIL」を、2026年7月から「KATE」で導入数字なし(化粧品事業の製品在庫を2027年までに約25%削減〈2024年比〉する目標の一環)2026年8月

公表事例はまだ少ない分野です。花王でも、最終判断は担当者が行います。

企業取り組み公表された成果発表
資生堂ジャパン約40部門・130人のアンバサダーで全社のAI活用を始動Geminiの月間アクティブ率は82%超。社内資料の探索時間を約67%削減(実証実験)2026年7月講演(9月報道)
コーセー内製の生成AIチャットボット「コーセーAI」を全社展開(2025年10月〜)ランク制の導入で利用回数が25%ほど増加(担当者談)2026年4月講演(5月報道)
マンダム生成AIの利用環境をグループ全社員に提供国内の利用率が40%前後から62%に(2026年1〜3月→6月)2026年8月(クラスメソッド)
ロレアル社内ツール「ロレアルGPT」を提供。OpenAIと協業7万3,000人が生成AI研修を修了2026年6月
コティ全社のAI研修「Supercharge with AI」100日で3,500人が受講。AIのアクティブ利用が100%超増加2026年5月
エスティ ローダー カンパニーズ消費者インサイトを分析するAIエージェント「ConsumerIQ」データ収集の時間が「数週間から数分」に2025年4月(マイクロソフト)

推進役や研修をツールと同時に用意する例が目立ちます。花王も2026年7月に「花王AIガバナンス方針」を定め、社員教育を始めました。研修の組み立て方は美容業界のAI研修とは?で解説しています。

  1. 人の知見をAIに移す:研究員の「目利き」や美容部員のノウハウを学ばせる
  2. 最後は人が判断する:AIは案と根拠を出し、決めるのは担当者
  3. 研修とルールを同時に進める:推進役・研修・ガバナンス方針をツールとセットにする
  4. 効果を数字で測る:作業時間や自己解決率、利用率で示す

  1. よくある質問を整える:整えたFAQが、AIで答える土台になります
  2. 接客の言葉を文書にする:トップスタイリストの説明を書き出し、生成AIで新人教材にします
  3. 診断を会話のきっかけにする:メーカーの診断機器などを提案の根拠に使います
  4. ルールと推進役を決める:マンダムは2023年春に「機密情報を入力しない」などのルールを整えました
  5. 導入前の数字を記録する:作業時間を測り、効果を比べます

お客様の情報をAIに入力する前には、利用目的の範囲内か確認しましょう(個人情報保護委員会)。店での使い方は美容室・美容サロンのAI活用ガイドで紹介しています。

Q. 美容業界では、どの分野でAI活用が進んでいますか?

今回集めた事例では、接客・カウンセリングと社内業務の公表が多く見られました。処方開発や肌診断も大手を中心に進んでいます。

Q. 中小のサロンでも大手の事例を真似できますか?

独自のAIを作らなくても、FAQの整備や接客ノウハウの文書化は今日から始められます。市販の生成AIで教材や回答案も作れます。

Q. AIで作った化粧品の広告文やSNS投稿は、そのまま使えますか?

そのまま使うのは避けましょう。薬機法第66条は、化粧品などの効能・効果について「何人も」虚偽・誇大な広告をしてはならないと定めています。AIの文章も人が確認してから使います。

Q. 美容メーカーの生成AI活用で、公表された大きな成果は?

資生堂ジャパンは講演で原料の探索時間を95%削減と紹介し、ロート製薬の担当者は約20日の工程が最短2日に短縮可能としています。P&Gは広告素材を5倍・5倍速く・5分の1のコストで作ったと公表しました。

  • 美容業界のAI活用は、2025〜2026年に研究開発や需要計画まで広がった
  • 成果の数字が出やすいのは、原料探索・広告制作・問い合わせ対応
  • 人の知見をAIに移し、最後は人が判断する仕組みが多い
  • ツール導入と同時に、研修・ルール・推進役を用意している
  • 中小のサロンはFAQ整備やノウハウの文書化から始められる

大手の事例にも、中小の美容企業・サロンが取り入れられるヒントが多くあります。YOHAKU DXでは、累計150社以上の研修・支援の経験をもとに、美容業界のAI活用を支援しています。